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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1097号 判決 1948年11月30日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の上告理由は昭和二十三年六月二十六日仙薹高等裁判所で言渡された判決は、被告人を不當に長く抑留された後の被告人の自白を證據として判決されたものであって、これは刑事訴訟法の應急的措置に関する法律第十條第一項に違反する不當の判決であるから破棄されんことを望みますというのである。

然し原審が證據として採用している被告人の自白は、昭和二十三年六月十九日の原審公判廷における自白であって被告人は昭和二十二年五月二十二日起訴と同時に勾留状の執行を受け爾來拘禁されていたが昭和二十二年七月十八日第一審裁判所において保釋を許され從って原審公判廷における取調當時は既に身柄は拘束されていなかったことが本件記録上明かである。右の如く勾留は二ケ月に足らぬものであり、しかも保釋後十ケ月を經て不拘束の状體においてなされた自白であるからかゝる自白は法にいう不當に長い抑留後の自白に該當しないものと見るを相當とする。從って論旨は理由がない。

よって刑事訴訟法第四百四十六條に從ひ主文の如く判決する。

以上は當小法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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